キャリアコンサルタントが企業にはいってやる支援の一つとして「セルフキャリアドック」っていうのがあります。人間ドックのキャリア版みたいな感じですね。
まあこれ、ちょっと変だなと思うのは、人間ドックは医療者という専門家の目が必要だからやるわけですが、こちらは「自分のキャリア構築」みたいな話なので、考えようによっては「上司が聞けば」って話なわけですよ。でもできてないわけですが。

まあ、大半の企業の上司は部下に対して「どう業績を上げてもらうか」は考えて関わる(それすらしない上司もたくさんいるけど)のですが、その人自身が「仕事を通じてどうなりたいか」とか「キャリア形成に何を悩んでいるか」とかには関わらない。
それは上司がダメだというわけではなく、上司もそうやって関わってもらった経験がないから、そんなこと考えもしないってだけなのですが。

で昨今はにわかに「キャリアデザインってやつが必要らしいよ」とか「それをタイミングを見てやらせておけば、気を抜いてるやつらもやる気を出すらしいよ」とか、そういう思惑で取り入れたいという組織があったりするわけですよ(汗)。

ちなみにこの場合の問題は山ほどあるのだけれど、一番は「キャリア」という言葉の意味が組織側と当事者側と講師側の三者で違うってこと(笑)。

キャリア研修をやらせると社員が辞めちゃうんじゃないかって心配をする企業があるよね、って話はしょっちゅう言われている。従業員のキャリアコンサルティングをお受けすることがよくあるのだが(その内容は守秘義務があるので社長には伝えない)、そりゃもうでるはでるはの組織への不満の渦…(苦笑)

でも、心ある(まともな)キャリアコンサルタントは誰一人としてそういう人に「辞めちゃいましょう」とか言うわけがありませんよ。
いや、その人が残っていたら会社にとってマイナスだっていうなら別ですが、そうじゃなくて、その人が気がついていない「その組織にいるからできること」について考えてもらうし、その人自身のキャリアビジョンをクリアにするために関わるのであって、会社を辞める方向にもっていくことなど(まともな会社であれば)絶対にないのです。

ただ言えるのは、そんな場面でとても多いのが、「なぜ、そんなことさえ上司と話せていないんだろう?」ということ。第三者のわたしが聞いていても「それは上司にまっすぐに伝えたほうがいいですよ」ということが多いです。また、「あなたの思っている解釈は、上司側から見るとちょっと違うよね」もほんとにほんとに多い。なのに全く伝えられていないことはとても残念ですね。

第三者で、信頼いただける専門家としてキャリアコンサルタントが関わる意味はそこにあるのですが、一方で「こんなことさえ会話していないって組織、大丈夫?」と思うことも多いですね。それが露呈するとき「上司が悪いとは思いませんが、わたしにとってはもっと別の道のほうがいいと思います」と本人が静かに決意してしまうことは、ないとは言えないです。

それをもし、キャリア研修がきっかけで露呈したとしてもそれはいずれ、もっと悪い形で表面化することになったはずです。だったら早めに問題を見つけ出して、そこからどうすればいいのかを双方で考えるそういうきっかけに使えるといいなあと(そこにも関わりたいなあと)思うのです。