女性リーダー向けマネジメントセミナー・研修を行っています。
でも本当は、女性に限らず「基本的なこと」をお分かりじゃないマネージャーは多く、そこは女性に限った話ではないようです。
というわけで、昔わたしがリアルに見た「勘違いマネジメント」の例を一つご紹介します。
ある新規事業を担当することになった若手がいました。
彼の担当の仕事が遅れに遅れ、もう大火事になっていまして、
なるべく早く立て直すことが必至の状況であったにも関わらず
その取り扱いについて新任管理職の上司の考え方が「?」でした。
その上司は、
少々仕事が遅れても、彼の育成を重視したい、
しかも、彼のプライドをこわさないように、彼が一人で
やりきったという感覚を持たせたい・・・という考えでした。
ところが、若手は、はじめての「事業の企画立案~実施」までのプロセスが、想定外のことばかりで混乱しているように見えました。
わたしの目には、若手が「具体的なアドバイスがほしいのではないか」「どこから手をつけて立て直せばいいのか、見えない」んじゃないかと思われました。
(本人も何をどう聞いていいのかすら、わからない状態)
さすがにまずいと思った上司に頼まれて、ある夜若手に直接状況確認をすることになりましたが、ほんとうに混乱していたのでわたしの独断で
・今すぐやるべきことのアイディアだしを一緒にして
・みえる化するためのフォームの提供 をしたところ
若手は一瞬で明るい表情になり「これで進めてみて、相談します!」と動きが加速しました。
そのことを上司に報告したら今度は上司の顔が曇ったのです。
なぜだ?と思ったら、どうも、彼に見せたいくつかフォームに引っかかっていました。
そういうカタチを渡したことが「若手が0から考える機会を奪った」と考えたようです。
ほんとうにそれは、若手の成長にとってよくなかったのでしょうか?
その後、若手からは進捗状況がわたしのところに入るようになりました。
打ち合わせをしたときにふと見ると、わたしが彼の業務の状況確認をしたときに使った「マインドマップ風落書き」が彼の手元に
わたしが自分用にアイデアをメモしたのが、たまたま彼のデスクにまぎれていたらしいのです。
なぜそんなものを後生大事にもっているのだろうか?そう思って聞いてみると、
目を輝かせながら
「柴田さんは、こうやって思考をまとめるってことですか?これ、なんですか?ぼくなりに色々と、考える方法を試したりしたんだけど、なんかどこから考えればいいのかわからなくて、こういうのが見たかったんですよ。プロセスがわかんないんです」と。
なるほどなあ。
やる気はあって、どうにかしなくちゃ、という思いはあっても
その思いと上司の叱咤だけじゃ、経験の浅い段階では動けないんですよね。
わたしもそうだったように、誰でも初めてのことはやっぱり先輩のマネから入るのですから。
任せる、というのは丸投げ+放置&叱咤ではなく
相手の力量を見極めて「何を」「どんなふうに」やるのか
目的は何で、そのためにどう考えたらいいのか、ゴールはどこなのか
適切に支援しないとダメなんだなあと、あらためて腑に落ちた体験でした。
(支援の量と質のコントロールが上司の考えるべきこと)
なのになぜか、
全部任せて「がんばれ」というだけのマネジメント か
全部逐一口を出して「手足」にしちゃうマネジメント か
両極端な場面を見ることが、とても多くて、もったいないなあと思っています。
これから育つ若者にとって、小さなプライドを守られることより、
成果を出せる自分を見るってことが大事。
もちろん組織にとってもそちらが大事。
若手が一人で歩けるその日までに、適度な距離感と「少しの無茶ぶり」で人は育っていくということを、特に人を育てるうえで経験浅いマネージャーのみなさんにお伝えできればと思っています。
参考書籍「マネジメントの基礎理論」海老原嗣生氏