組織には組織の目的があります。そして、働く個人には、それとは別に働く理由や仕事で実現したい姿があるでしょう。その両者は必ずしも一致はしません。では、組織にとっていい人材とは「個人の欲求」を持たない人材なのでしょうか。
組織にとって使いやすく、思い通りになる人材というものがいるとしたら、どんな人材なのでしょうか。そしてその人材は本当に、組織の目的に資する人材なのでしょうか。
組織の決定=絶対解だとして、それに従う人は、一歩間違うと「組織にぶらさがり」「組織のせいにして」「自ら行動し、考えることをしない」ことになるかもしれません。そういう人に「自分で考えて主体的に行動を」といったところで、なかなか動いてはくれません。
これまで、自分で考えることより、組織の決定に順応して行動することを評価され続けてきたのであれば、そうなるのはムリもないことです。
では、組織から見て本当に必要な人材とはどんな人材なのでしょうか?自ら問題意識を持ち、よりより成果につながる行動を出来る人ではないでしょうか。
そのためには、自分が今、どんな力を持っていてこの先どうなりたいと考えているのか。そのために何を学び、何を体験し、どう成長していけばいいのか。自分はどうありたいか、という目標と、組織が求めていることを上手く融合させる力を持った人、そんな人材ではないでしょうか。
高度成長した20世紀の優秀な社員は「組織の決定に従い、自分を消して組織視点で行動できる人」であったとすれば、変革の21世紀に力を発揮できるのは、組織の決定をうのみにせず、よりよい解を導き出せる主体性を持ち、自分と組織の相互成長を見出せる人です。
キャリア自律とは、社員個々人のキャリア(生涯にわたった仕事や経験の積み重ねによって築き上げる姿=ライフキャリア)デザインと、組織の中で発揮してほしい社員の姿との両立のために、欠かせない考え方です。この視点で社員の育成を考えている組織では、ぶらさがり社員ではなく、歯ごたえのある社員が育っていきます。
社員に好き勝手させることでも、社員の成長について組織が学びの支援を放棄することでもありません。