「いい人が採れない」
「内定辞退を防ぎたい」
「若手がちっとも育たない」
「任せられるやつがいないんだよ」

とかなんとか言ってるそばから、今いる人の心がすさんで、モチベーションが下がっていくのを放置する組織がある。

それは、船底の大きな穴を放置したまま、バケツで水を汲んでいるみたいなものだよなあと残念になる。

でも、バケツで水を汲み入れる行為はなんとなく、「目の前で水が溜まっている気がして」「ちょっと達成感・やってる感」があって、「汗をかいている自己満足にもなる」のかもしれない。
船底に潜って穴をふさぐために動いていても、外からは見えないし、なかなか水が抜けているのには誰も気が付かないから、「水を止めた」ことにはもっと気が付かないもんね。

一人二人と続けて人がやめていく部署があって、いつもあの上司の元で人が辞めるなあとうすうす気が付いている人たちがいても、そこを止めようとしない組織は多い。

例外的に生き延びた部下がいて、結果を出していると、「そちらが当たり前」で「辞めたほうが劣っている」と思いたいのもあるだろう。こういうのはある種のバイアスだよね。

いくら新たに人を補充して、一生懸命育てて現場に送り込んでも、「採用の時に社長が話していたことと違う」「人事の人は不満を(もう)聞いてくれない」「上司は独善的で、聞く耳を持たない」。そんな理由から、櫛の歯が欠けるように辞めていってしまうことになる。そして「採用が悪い。もっと根性のあるやつを採れ」なんて指示が飛ぶこともある。残念だ。(辞めないまでも、いる人がやる気がなくて指示をこなすだけの組織って、未来がある?)

キャリアコンサルティングの記録を読み返していると、総論(会社の育成方針)と各論(現場のリアル)の温度差をひどく感じる。
みんな「これからどんどん人手不足になる。」と知っているし憂慮しているのに、なぜかそれはそれ、現場の目の前にいる「人」には、自社の人材としてなんとかしよう、ということになっていない。

でもね、忙しすぎる中間管理職ひとりに、その責務を武器も与えないまま丸投げするのは止めたほうがいい。
人材は、新人だけじゃなく、いろんな段階で悩み、迷い、成長の壁に当たり、ときに組織の決定を理不尽にとらえてしまう。

その節目に「適切な支援と対話」を置いてほしい。それを上司ひとりの裁量(つまり丸投げってこと)にゆだねないでほしい(そもそも、それ、できる上司とできない上司の差が大きすぎるし)。ぜひ、キャリアコンサルタントを活用してほしい。(「育成する人の支援」、はキャリアコンサルタントの重要な職務として、位置づけられています。やってない人も、できない人も多いけど(_ _。)

組織で働くさまざまな人たちの心の叫びを聞きながら、こんがらがった課題を整理し、キャリアの意味を再構成するお手伝いをする。そんな自分の仕事にはとても意義を感じている。でも、そう考える人がもっと、組織の中にもいてほしいし、一人で抱え込む上司の支援も、もっとしていきたいと、心から思う。

(今日も、職場ぐるみの育成コンサルティングに入っている組織で、そんな「上司」の方の相談を受けていて、ますますその大切さを痛感していたところなんだよなあ)